吉田所長が下した海水注入の真相|吉田調書と最期の証言が語る真実

吉田所長が下した海水注入の真相|吉田調書と最期の証言が語る真実に関する専門家の意見を分かりやすく解説いたします。

事故当時、現場で何が起きていたのかを雄弁に物語るのが、政府事故調査委員会が吉田所長に対して行った計13回、約29時間に及ぶ聴取記録、通称『吉田調書』です。

調書には、原子炉の圧力が下がらず減圧弁が開かない絶望感や、水素爆発の衝撃音を聞いた瞬間の心境が赤裸々に語られています。吉田氏は当時の心境について「東日本が壊滅するイメージが頭をよぎった」「私たちと一緒にここで死んでくれる人間が何人いるか、顔を思い浮かべていた」と証言しており、まさに極限の死線上にあったことが浮き彫りになっています。

また、一時期メディアで大きく報じられた「所員9割が命令に違反して福島第二原発へ撤退した」という報道は、後に明確な誤報として取り消されました。吉田所長が出した指示は「構内の線量が比較的低い場所で一時退避せよ」というものでしたが、混乱と通信遮断のなかで伝達が錯綜し、多くの作業員がより安全な福島第二原発(2F)へと移動したのが実情でした。

吉田所長自身も聴取の中で「部下たちが逃げたとは思っていない。線量の高い現場に残すべき人員を絞り込み、待機させるための合理的行動だった」と部下たちを一貫して擁護しています。海外で「Fukushima 50(フクシマフィフティ)」と称賛された名もなき技術者・作業員たちと、彼らを束ねた吉田所長の間には、極限下で培われた強い信頼関係が存在していました。

高橋 健太

高橋 健太

ライフスタイル編集者

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。