ショスタコーヴィチ9番の真実|スターリンを翻弄した軽妙な奇策
1945年11月3日、エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー交響楽団によって行われた初演は、聴衆に強い戸惑いと衝撃を与えた。あまりに軽妙でコンパクトな仕上がりに、会場には失笑と困惑、そして一部の鋭い聴き手による熱狂が入り交じった。
だが、共産党幹部たちの反応は冷ややかだった。党の公式批判では「歴史的勝利の重みを無視した軽薄な作品」と断じた。この不敬とも言える態度は、1948年のいわゆる「ジダーノフ批判」においてショスタコーヴィチが反人民的モダニズムとして批判される決定的な伏線となったのである。