中村屋を支える波野好江の素顔と勘三郎亡き後の葛藤に迫る独占取材
波野好江の生き様を語る上で欠かせないのが、その卓越した血統と育ちである。名門・成駒屋の頂点に君臨した昭和の名優、七代目 中村芝翫の次女として生まれ落ちた彼女は、幼少期から伝統芸能の最前線にある熱気と格式を肌で感じて育った。歌舞伎の家に生まれ、歌舞伎の家に嫁ぐ——その宿命を彼女は極めて自然に、かつ誇りを持って受け入れた。
十八代目 中村勘三郎(当時は五代目 中村勘九郎)との結婚は、昭和から平成へと移り変わる歌舞伎界における大事件だった。破天荒でエネルギッシュ、常に新しい挑戦を求めた夫を影で支え、時にはその暴走を優しく戒める女将の手腕は、劇団関係者の間でも高く評価されていく。名門同士の結びつきという重圧を跳ね返し、中村屋という独自の文化を育んだ根底には、幼少期から培われた伝統への深い敬意が存在した。