世界を虜にする「着る彫刻」、日常を劇的に変える服飾の革新

世界を虜にする「着る彫刻」、日常を劇的に変える服飾の革新にまつわる最新トピックを分かりやすく発信ます。

この服の根底には、テキスタイル史を根底から覆した技術的ブレイクスルーが存在する。デザイナーの三宅一生と、長年テキスタイルデザインを牽引した皆川魔鬼子。二人の飽くなき探求が生んだのが、従来の常識を180度反転させた「製品プリーツ(後プリーツ)」という驚異の技法だった。

通常、プリーツ加工は裁断前の布地に施される。しかし彼らは、通常の約2.5倍から3倍の大きさに裁断・縫製したポリエステルの服を、特殊な和紙に挟んで熱プレス機に通すという前代未聞のプロセスを確立した。熱と圧力によって布地は縮み、同時に形状記憶のひだが刻み込まれる。縫製糸まで同一のポリエステル糸で仕立てることで、均一な伸縮性と耐久性を実現したのだ。

布地の開発から加工温度のミリ単位の調整に至るまで、日本の卓越した工場技術とデザイナーの執念が結実したこのシステムは、単なるデザインの思いつきではない。素材そのものがフォルムを決定するという、本質的なものづくりの勝利だった。

山下 哲也

山下 哲也

自動車・モビリティライター

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。