地元民しか読めない?列島に眠る方言漢字の謎と驚異の誕生秘話
この豊饒な文字文化の解明において、決定的な功績を挙げ続けているのが早稲田大学の笹原宏之教授だ。自ら全国各地の集落へ足を運び、埃をかぶった石碑や古文書、地元商店の手書きポップまで徹底的に調査する同教授の足跡は、机上の文献学にとどまらない躍動感に満ちている。
笹原教授らの知見を結集させた方言漢字研究プロジェクトや、国立国語研究所が進める網羅的なコーパス構築によって、各地の文字がどのような社会的文脈で発生し、どのように世代間を継承されてきたのかという「文字の地域生態系」が白日の下に晒されつつある。
調査からは、ひとつの集落だけで数百年にわたり守られてきた文字や、特定の親族内でのみ受け継がれる屋号由来の漢字など、息をのむような個別具体例が次々と浮上している。中央から押し付けられる標準字体に抗い、生活のリアルを文字化しようとした民衆のエネルギーが、そこには凝縮されている。