英雄か虚像か?ナポレオンの名画に隠されたプロパガンダの真実

英雄か虚像か?ナポレオンの名画に隠されたプロパガンダの真実とはどんな影響があるのか? 主要なファクトを整理してお届けします。

幅10メートル近くに及ぶルーヴル美術館の至宝『ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠』は、新古典主義の頂点を示す記念碑的大作だ。1804年12月、ノートルダム大聖堂で行われた戴冠の瞬間を記録したこの巨大な歴史画にも、幾重もの政治的配慮と作為が隠されている。

もっとも象徴的な改変は、中央上部の桟敷席に堂々と腰掛けるナポレオンの母マリア・レティツィアの姿だ。史実において、彼女は息子の妻ジョゼフィーヌとの激しい不仲や親族間の対立から戴冠式を公式にボイコットし、ローマに滞在していた。しかしナポレオンはダヴィッドに命じ、あたかも母が息子の晴れ舞台を心から祝福しているかのように描き加えさせた。「家族の団結」という帝国統治に不可欠なイメージを捏造するためだ。

さらに、背後に座る教皇ピウス7世の手の描写も変更された。当初は膝の上に置かれていた教皇の手は、ナポレオンの要求によって祝福を与える形へと描き直された。教皇の権威を自らの支配の正当化に利用しようとする、狡猾な政治計算の証左である。なお、後に制作され現在はヴェルサイユ宮殿に展示されている同作の複製画では、ナポレオンの妹ポーリーヌのドレスがピンク色に変更されるなど、細部のバリエーションにも当時の宮廷力学が反映されている。

山田 真由

山田 真由

自動車・モビリティライター

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