伝統工芸の常識を破る表現者・田村有紀|尾張七宝7代目が描く革新と音楽の未来
田村有紀を語る上で欠かせないのが、音楽活動というもう一つの軸だ。彼女は現役の七宝焼職人でありながら、自ら作詞作曲を手がけ、ステージに立つシンガーソングライターでもある。
なぜ職人が歌うのか。その問いに対し、彼女の回答は明快だ。表現の手段が異なるだけで、根底にある探求は一つだからである。指先を通じて金属とガラスに命を吹き込む「視覚の表現」と、言葉と旋律で心を揺さぶる「聴覚の表現」。この両輪が存在することで、彼女自身のクリエイティビティは相乗効果を生み出している。
「歌うことで自分の声に耳を傾けてもらい、そこから七宝焼という素晴らしい日本の伝統工芸を知ってもらう。表現者としての露出はすべて、手仕事の魅力を現代に届けるための架け橋なんです」
メディア露出やラジオのパーソナリティ、ライブパフォーマンスを通じ、彼女は「敷居の高い職人像」を打ち破った。親しみやすく、エネルギッシュな等身大のキャラクターは、伝統工芸の世界に新しい風を吹き込んでいる。