三毛別羆事件の写真は本物か?ネット拡散画像の真実と記録の闇
検索結果やまとめサイト、動画プラットフォームなどで「三毛別事件の加害ヒグマ」として頻繁に提示される古写真は、大別して2種類存在する。一つは雪上に横たわる巨大な熊とそれを取り囲む毛皮帽をかぶった男たちの集合写真、もう一つは仕留められた熊を屋根付きの荷車に載せて市街地で見世物にしている写真だ。
結論から言えば、現在インターネット上で「事件の主犯ヒグマ」として広まっている鮮明な写真のほぼ全ては、別の時期・別の場所で捕殺された別個体のものである。最も有名な「男たちが取り囲んでいる巨大熊」の記録写真は、昭和初期に道東や旭川周辺で捕獲された別件のエゾヒグマ、あるいは大正期に札幌近郊で撮影された記録写真が誤って転載されたものと確認されている。
当時、現場となった苫前村(現・苫前町三毛別)の六線沢は、吹雪吹き荒れる極寒の未開地だった。当時の写真技術はガラス乾板を用いた大型カメラが主流であり、極寒の山中や吹雪の中へ高価な機材を運び込み、肉食獣の襲撃現場を即座に記録することは物理的に極めて困難だった。北海道庁の公式文書や警察資料にも、被害直後の生々しい遺体写真や射殺直後の姿を現場で捉えた確証ある写真は保管されていない。