太田裕美「九月の雨」切ない歌詞の真実と筒美京平・松本隆の美学
1970年代後半の日本の音楽シーンは、伝統的な昭和歌謡の文脈と、シンガーソングライターたちが台頭し始めていたニューミュージックの波が複雑に交差する過渡期にあった。『九月の雨』はその双方の美点を完璧なバランスで融合させた、エポックメイクな楽曲として高く評価されている。
オーケストレーションを贅沢に取り入れた筒美京平のトラックメイキングは、後のシティポップが持つ都会的な孤独感やハイセンスな洗練とダイレクトに接続している。歌謡曲の哀愁を持ちながらも、洒脱なコード進行とモダンなサウンド構成を持つこの作品は、日本独自のアバンギャルドで洗練されたポップス文化の架け橋としての役割を果たしたのだ。