孤独のグルメから紐解く怪優の原点——松重豊が「役者を辞めていた」どん底の20代と、あの頃の東京
現場復帰を果たした松重を待っていたのは、その強面と高身長を活かした「悪役」としてのオファーだった。Vシネマや刑事ドラマで、鋭い眼光を放つヤクザや犯人役を怪演。若き日の苦労と挫折が、スクリーン越しに滲み出る独特の凄みへと昇華されていた。
しかし、彼の真の魅力はそこにとどまらなかった。年齢を重ねるにつれ、その鋭さは柔和なユーモアへと変化していく。2012年に始まった「孤独のグルメ」は、まさにその集大成だった。ただ美味そうに飯を食う大男。その姿に、かつて建設現場で黙々と汗を流し、日常の小さな幸せを噛み締めていた若き日の松重の影を見るのは、決して穿ちすぎた見方ではないだろう。