嵐の作詞曲が放つ引力|サクラップ誕生秘話から5×20の真実まで
嵐の音楽的アイデンティティを語る上で、櫻井翔が手掛ける「サクラップ」の存在を外すことはできません。今日でこそボーイズグループにおけるラップ担当の存在は完全に定着していますが、嵐がデビューした1999年当時、メジャーアイドルが自らリリックを書き下ろし、本格的なヒップホップのマナーを踏襲してスピットすることは極めて異例の試みでした。
櫻井が初めてシングル表題曲で本格的なラップ作詞を手掛けたのは、2003年発売の11thシングル『言葉より大切なもの』です。それまでもカップリング曲やアルバム収録曲で試行錯誤を重ねていた櫻井ですが、自著や音楽雑誌のインタビューにおいて、当初は「アイドルが書くラップなど形骸的な真似事に過ぎないのではないか」という外部からの冷ややかな視線や、自らの中に渦巻く葛藤と常に戦っていたと振り返っています。
転機となったのは、日本のヒップホップ黎明期を支えたクリエイター陣との出会いでした。m-floのVERBALや今井了介といった本格派アーティストからの刺激を受けつつ、櫻井は徹底的に押韻(ライミング)の構造とフロウを研究。単に言葉をリズムに乗せるだけでなく、日本語特有のイントネーションを崩さずに硬質なビートへと落とし込む独自のスキルを磨き上げました。
その真骨頂が結実したのが、2006年リリースのアルバム『ARASHIC』に収録された『COOL & SOUL』です。「アイドルという枠組みへの世間の侮蔑」に対し、痛烈なアイロニーと圧倒的な気迫で真っ向から反論したリリックは、音楽業界全体に強い衝撃を与えました。「嵐探し 辺り騒がしい」という象徴的なパンチラインをはじめ、自らの置かれた立場と覚悟を赤裸々に刻み込んだサクラップは、グループが国民的スターへと駆け上がる起爆剤となったのです。