和歌山カレー事件の真相と新証言:林眞須美死刑囚が問う冤罪の影
この事件を語る上で避けて通れないのが、林家が手を染めていた巨額の保険金詐欺事件だ。夫である林健治が過去にヒ素を自ら摂取して多額の給付金を得ていた事実は、捜査当局と世論に「ヒ素を自在に操る冷酷な一家」という強烈な先入観を植え付けた。
だが、保険金詐欺の動機は明白な金銭欲であるのに対し、夏祭りのカレーに無差別毒殺を仕掛ける動機はあまりにかけ離れている。検察側は動機について「祭りの準備中に他の主婦たちから疎外感を抱いたことによる激憤」という曖昧な推測を提示するに留まった。林健治自身、メディアの取材に対して「金にならない殺人を眞須美がやるはずがない」と一貫して証言し続けている。保険金詐欺という過去の罪が、カレー事件の犯行者像を補強する道具として都合よく利用されたのではないか。その予断の構造が、冷静な事実認定を阻んだ疑いは晴れていない。