福塩線の廃線危機と2026年の真相|電化・非電化の格差と存廃の行方

福塩線の廃線危機と2026年の真相|電化・非電化の格差と存廃の行方の特集記事をお届けします。最新トレンドが満載です。

平日の日中、府中駅の非電化区間専用ホームに足を運ぶと、そこには強烈な静けさが漂っています。定刻に暖機運転の重低音を響かせるキハ120系の車内に乗り込む乗客は、記者を含めてわずか3名。ボックスシートに腰掛ける高齢者が2名と、定期券を大事そうに握りしめた通院帰りと見られる女性だけです。

発車後、列車は徐々に高度を上げ、山林の間を抜けていきます。沿線住民の生の声を聞くため、途中主要駅である上下駅(府中市上下町)で下車し、駅前で出会った70代の地元商店主へ話を聞きました。

「昔は府中や福山の高校へ通う子どもたちで朝のホームが溢れかえっとった。じゃが今は子どもの数自体が減ったうえに、親が車で高校まで送り迎えするのが当たり前。わしらも病院や買い物に行くときは軽トラを運転する。列車を使うのは、免許を返納したほんの一部の年寄りか、たまにやってくる鉄道好きの人くらいなもんよ」

ネット上のSNSや地域コミュニティの投稿を検証しても、複雑な住民感情が浮き彫りになります。
「なくなったら困るという声は大きいけれど、じゃあ自分は今年何回乗ったかと聞かれたら1回も乗っていない」
「三次へ行くにも福山へ出るにも、国道を自家用車で走ったほうが圧倒的に早くて融通が利く」
こうした率直な吐露が少なくありません。かつて地域の大動脈だった鉄路は、モータリゼーションの完全な定着によって、いつの間にか「そこにあって当たり前の風景」ではあっても「生活に不可欠な移動手段」ではなくなってしまっているのが現場の実態です。

山口 彩花

山口 彩花

写真家・フォトエディター

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。