揺さぶられっ子症候群の真実|危険な境界線と症状・後遺症リスク
日本国内における揺さぶられっ子症候群をめぐる言説で、近年極めて大きな転換点となったのが刑事裁判における相次ぐ無罪判決の確定です。2010年代後半から2026年代初頭にかけ、乳児に硬膜下血腫や眼底出血が見つかったことで傷害致死罪などに問われた親や保育士に対し、大阪高裁や東京高裁などで無罪判決が相次ぎました。
裁判所が無罪を言い渡した背景には、従来の「三徴候(硬膜下血腫・眼底出血・脳浮腫)が揃っていれば、他に原因がない限り揺さぶり虐待と推定できる」という機械的なSBS仮説への医学的・法医学的疑義がありました。弁護側医師や国際的な法医学研究から、以下の可能性が立証されたためです。
- わずかな高さからの偶発的転落(ベッドやソファからの落下)でも硬膜下血腫を生じ得る。
- 分娩時の頭部外傷(出産時出血)が残存し、数週間〜数か月後に再出血する自然病態が存在する。
- 先天的な凝固異常や良性乳児硬膜下水腫など、内因性疾患が引き金となるケースがある。
これを受け、厚生労働省や日本小児神経外傷学会などの関連機関は、マニュアルや診断の手引きを大幅にアップデートしました。現在では「三徴候があるから即座に虐待」と短絡的に結論づけることは戒められており、綿密な画像診断(MRI・CT)、全身の骨病変チェック、詳細な受傷機転の聞き取り、基礎疾患の鑑別を総合的に行う「多角的な鑑別診断」が医療現場に定着しています。