日本で一夫多妻制は可能か?重婚禁止の法理と現代ポリアモリーの限界

日本で一夫多妻制は可能か?重婚禁止の法理と現代ポリアモリーの限界について見逃せない 注意点を分かりやすく解説いたします。

法律上の婚姻届を出さず、複数のパートナーが互いの合意のもとで愛し合い共同生活を営む「ポリアモリー(複数愛)」や「事実婚形式の多重同居」が、インターネット番組や週刊誌で特集される事例があります。刑法184条の重婚罪は「法律上の婚姻届を重複して提出すること」を構成要件としているため、戸籍上の手続きを行わない事実婚や同居そのものは処罰対象になりません。

取材現場や当事者の告白から浮かび上がるのは、メディアが描く「風変わりで円満なシェアハウス」という牧歌的なイメージとは乖離した、過酷な現実です。

第一に、法律上の権利保護が極めて脆弱である点です。戸籍上の婚姻関係がないパートナーには、配偶者控除などの税制優遇が適用されず、パートナーが急病で倒れた際にも病院の集中治療室で「家族」として面会や医療同意を拒絶されるケースが後を絶ちません。子供が生まれた場合、法律婚でないパートナーの子は「非嫡出子」となり、男性側の認知がなければ法的な親子関係すら成立しません。認知したとしても、共同親権の運用や相続税の割増問題など、煩雑な法的手続きに生涯直面し続けることになります。

さらに見過ごせないのが、閉鎖的な多人数共同生活が孕む心理的支配と搾取の危険性です。その最たる教訓として司法史に刻まれているのが、東京都東大和市で発生した「東大和事件(渋谷博仁)」です。

自称占い師の渋谷博仁は、「共同生活をしなければ死ぬ」などと女性たちをマインドコントロールし、複数の女性と同居して「ハーレム」を形成。離婚と再婚を繰り返して事実上の多妻状態を作り出し、後に準強制性交未遂罪などで逮捕・起訴され実刑判決を受けました。2026年にも新たな女性に対するマインドコントロールと性的暴行未遂で再逮捕されています。公判記録や報道で明らかになったのは、閉鎖空間における精神的威圧、恐怖による心理的拘束、そして絶対的な上下関係の構築でした。一見合意に基づいているように見えても、力関係の非対称性がある共同生活は、容易に深刻な人権侵害へ変質するという冷徹な現実を社会に突きつけました。

山口 彩花

山口 彩花

写真家・フォトエディター

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。