力士の髪の秘密を解明!洗髪頻度や鬢付け油の真実と薄毛引退説の真相
ネット上の掲示板やSNSで定期的に話題となるのが、「力士はハゲたら髷が結えなくなるため強制的に引退させられる」という噂です。力士の象徴が髷である以上、薄毛に悩む力士はどのような現実に直面するのでしょうか。
結論から述べると、日本相撲協会の規約上に「頭髪が薄くなったことを理由に引退を勧告・強制する」という条文は一切存在しません。
しかし、土俵に上がる力士は正装として髷(関取は大銀杏)を結っていなければならないという伝統的な不文律が存在するため、「元結で髪を束ねて髷の形を作ること」が物理的に不可能になれば、事実上土俵に上がれなくなるという構造的な制約はあります。
実際には、力士が薄毛を理由に志半ばで引退に追い込まれるケースは極めて稀です。ここでも前述した床山の「神技」が発揮されます。頭頂部の毛量が減少した場合でも、側頭部や後頭部の髪を巧みに引き上げ、鬢付け油の粘着力を駆使して元結の結び目に毛束を集めることで、見事な大銀杏のシルエットを作り出します。過去にも頭頂部の後退に悩みながら、床山の卓越した技術によって引退の日まで威厳ある大銀杏を結い続けた名関取は数多く存在します。
力士が土俵を去る本当の理由は、怪我による成績不振や番付の降格、あるいは気力の限界であり、薄毛は副次的な悩みに過ぎません。
そして、力士が相撲人生に幕を下ろす際に行われるのが「断髪式」です。後援会長、恩師、親族、同期生など数百名が土俵に上がり、力士の髷に一人ひとり鋏(はさみ)を入れていきます。最後に師匠である親方が大銀杏を完全に切り落とす瞬間、館内は静寂と感動に包まれます。大銀杏を落とすことは、力士という特別な存在から一人の社会人へと戻る「再生の通過儀礼」であり、髪に宿る魂を解き放つ厳かな儀式なのです。