江口寿史の現在と伝説の全貌|名作誕生秘話から妻・水谷麻里の私生活まで
江口寿史を語る上で避けて通れないのが、数々の「遅筆伝説」と休載にまつわるエピソードです。週刊連載の過酷なスケジュールと、1本の描線に対する異常なまでのこだわりが衝突した結果、数多くの締め切りトラブルが発生しました。原稿が落ちる恐怖の象徴として本人が作中に登場させた幻覚のキャラクター「白いワニ」は、出版業界における伝説的ミームとして今なお語り継がれています。
当時の特番インタビューや自著『江口寿史の正直日記』などの手記によると、締め切り前夜に吉祥寺の街へ逃亡し、ホテルや山荘にカンヅメにされながらも「納得のいかない線は描けない」とペンを置き続けた生の告白が克明に綴られています。『ストップ!! ひばりくん!』の連載中断や未完のままの終了は、読者や編集部に大きな衝撃を与えましたが、そこには単なる怠惰ではなく、表現者としての極限の葛藤がありました。
妥協して既定のページ数を埋めることよりも、一枚の絵としての完璧さを選ぶ――その徹底した職人気質こそが、後に漫画からイラストレーションという唯一無二の主戦場へと移行する決定的な原動力となりました。