伊東四朗の現在と引退説の真相|88歳の名優が魅せる生涯現役の境地
伊東四朗の芸能人生は、戦後日本のエンターテインメント史そのものと言っても過言ではありません。学生時代から喜劇に憧れ、新宿フランス座などを経て「石井均一座」に入団。その後、故・三波伸介さん、故・戸塚睦夫さんと共に結成したてんぷくトリオで一世を風靡しました。昭和のお茶の間を爆笑の渦に巻き込んだトリオコントで培った絶妙な間合いと人間観察眼は、後の俳優活動の強固な土台となりました。
コメディアンとしての地位を確立していた伊東が、名実ともに日本屈指の演技派俳優として全国に衝撃を与えたのが、1983年に放送されたNHK連続テレビ小説『おしん』です。主人公・おしんの厳格でありながら深い哀哀と父性愛を秘めた父親・作造役を熱演。極貧の中で苦悶する農民の姿を鬼気迫るリアリティで演じ切り、最高視聴率62.9%を記録した国民的ドラマの屋台骨を支えました。
さらに平成に入ると、日本テレビ系の大ヒット情報バラエティ『伊東家の食卓』(1997年〜2007年)で、お茶の間を温かく包み込む「大黒柱のお父さん」として再ブレイクを果たします。日常生活の知恵である「裏ワザ」を紹介する同番組は最高視聴率28.8%を叩き出し、世代を超えて親しまれる国民的タレントとしての存在感を不動のものとしました。
シリアスなサスペンス、ホームドラマ、歴史劇、そして爆笑を誘う喜劇舞台まで、伊東四朗のドラマ代表作は枚挙に暇がありません。コメディアンの照れ隠しと、名優の研ぎ澄まされた職人技が同居する独特の佇まいは、令和の現在においても他の追随を許さない魅力を放ち続けています。