水族館で大人気「エイの裏側」笑顔の真相と宇宙人説の正体を解明
ガラス越しに見えるあの微笑みは、生物学的にいえば完全な偶然が生み出した「顔の配置」に過ぎません。エイの裏側が顔に見える理由の中核には、捕食行動と呼吸を両立させるために研ぎ澄まされた独自の進化史があります。
多くの人が「目」だと信じて疑わない上部の小さな丸い窪み。その実態はエイの裏側にある鼻の穴と口のうちの「鼻の穴(嗅覚器官・鼻孔)」です。エイの嗅覚は極めて鋭敏で、水中に溶け込んだ獲物のアミノ酸や微細な体液の匂いをこの鼻孔から吸い込み、左右の嗅覚器官へと送り込んでいます。そして、鼻孔のすぐ下で緩やかなカーブを描いて開閉している裂け目こそが、本物の「口」です。
では、エイの目と鼻の正しい位置はどうなっているのでしょうか。エイの目は裏側ではなく、海底から上方を監視するために背中側(表側)に配置されています。サメと同じ軟骨魚類であるエイは、進化の過程で海底に身を潜めて暮らす底生生活(ベントス生活)へと特化しました。砂泥に潜りながら上方を通過する外敵や獲物を察知するため、両目は背中の最も高い位置へと移動したのです。
さらに目のすぐ後方には「噴水孔(ふんすいこう)」と呼ばれる大きな穴が開いています。砂に潜った状態のまま口から海水を吸い込むと砂を誤飲してしまうため、エイは背中の噴水孔から清浄な海水を吸い込み、裏側のエラへと送る特殊な呼吸システムを完成させました。私たちが水槽の底から見上げる「顔」は、底生生活に最適化された器官配置が、人間の目には偶然にも「目と口」のプロポーションに見えているというわけです。