内澤旬子の現在と軌跡|小豆島移住から名作の舞台裏まで徹底検証
内澤旬子氏の作品に通底する最大の特徴は、「自己の肉体を実験台にして真実を確かめる」という身体性にあります。その原点ともいえる作品が、30代後半で経験した乳がんの告知から治療を描いた『身体のいいなり』です。
病に冒された自らの身体を、悲劇のヒロインとしてではなく、まるで他者の構造物をスケッチするかのように観察。全摘手術後の乳房再建において、自家組織移植やインプラントの選択肢に直面した際の葛藤、医師とのコミュニケーションの難しさ、身体イメージの変容をユーモアを交えて描き出しました。この「どんな不条理な出来事も観察と表現の対象にする」という強靭な精神こそが、彼女のエッセイやルポルタージュが持つ唯一無二の魅力となっています。