酒鬼薔薇事件の本は何を語るのか|手記『絶歌』と遺族の告白、現在の全真相
2015年6月、太田出版から突如として刊行された元少年Aの手記『絶歌』は、初刷10万部という異例の規模で世に出されました。事前の告知は一切なく、被害者遺族への配慮を欠いたゲリラ的な出版形態は、瞬く間に激しい社会的バッシングを巻き起こすことになります。
本書の構成は大きく二部に分かれています。第一部では、小学生時代の動物虐待や祖母の死を契機とした死への執着、そして1997年に犯行へ至る衝動と現場での凄惨な行為が、装飾過剰とも言える文学的表現で生々しく描写されています。読者の多くが嫌悪感を抱いたのは、自らの凶行を「聖なる儀式」のように振り返るようなナルシシズムが随所に見られた点です。
一方の第二部では、2004年に医療少年院を仮退院した後の生活が綴られています。身元引受人となった弁護士や支援者のもとで溶接工などとして働きながら、実名が露呈する恐怖に怯え、社会の片隅を転々とする逃亡者然とした日々が描かれます。なぜ出版に踏み切ったのかについて、作中で元少年Aは「自分の言葉で過去を語り、生きている証を残すことが責任を取る唯一の道だと考えた」という趣旨の主張を展開しています。しかし、この出版理由は、後述する遺族の心情を真っ向から踏みにじる結果となりました。