恵文社西大路店の現在と閉店の真相|一乗寺店との決定的な違いを検証
「恵文社」という名を聞いたとき、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは左京区一乗寺にある店舗です。2010年代には英ガーディアン紙による「世界で最も美しい本屋ベスト10」に選ばれ、現在も国内外から多くの旅行者が訪れる観光名所となっています。ここで浮上するのが、「なぜ同じ恵文社の屋号を持ちながら、一乗寺店と西大路店は全く異なる運命をたどったのか」という疑問です。
その背景には、店舗運営方針における「ドラスティックな業態変革の有無」が存在します。
もともと恵文社は、京都ローカルにおいてチェーン展開・のれん分けを行っていた書店グループでした。しかし、一乗寺店は早くから独自の道を歩み始めます。当時の店長や名物バイヤーたちが主導し、「売れ筋ランキングに頼らない独自セレクト」「生活雑貨やクラフト作品の常設販売」「ギャラリースペースの併設によるイベント展開」など、単に本を売る場から「本のあるライフスタイルを提案する文化発信拠点」へと大胆な脱皮を図ったのです。
これに対し、西大路店はあくまで地域住民の日常を支える「街の本屋さん」としての役割に特化していました。学校帰りの学生が週刊誌を立ち読みし、近隣の住民が月刊誌や文庫を買い求め、地元の小中学校の教科書やドリルを届けるという、昭和から平成にかけてのオーソドックスな書店モデルを愚直に維持したのです。
一乗寺店が「目的地としての書店(デスティネーション・ストア)」へと変貌を遂げたのに対し、西大路店は「通過点としての書店」の域を出ることができませんでした。ネット書店の普及によって「わざわざ足を運ぶ理由」を持たない書店の淘汰が進む中で、両者の戦略の違いが結果として如実に表れたと言えます。