マフィン食中毒事件の真相と現在|原因と防腐剤不使用の落とし穴
マフィンのような水分が比較的少ない焼き菓子は、一般的に生菓子に比べて食中毒リスクが低いと考えられがちです。ではなぜ、今回の事件では納豆のような異臭や糸引きという、焼き菓子ではあり得ない現象が発生したのでしょうか。
食品微生物学の専門家が指摘する主な原因菌は、セレウス菌や枯草菌(バチルス属・通称ロープ菌)、および黄色ブドウ球菌です。特にパンや焼き菓子に「糸引き」と「異臭」をもたらす現象は製パン業界で「ロープ現象」と呼ばれ、土壌や穀類に広く生息する枯草菌が引き起こす典型的な変質です。
これらの菌の恐ろしい特徴は、熱に強い「芽胞(がほう)」と呼ばれる殻のような構造を形成することにあります。通常のオーブン加熱(中心温度80〜90度程度)では死滅せず生き残り、その後の冷却プロセスや保管温度が不適切だと、生き残った菌が一気に増殖して毒素を産生します。店主は当時のSNS発信で「1人で約3,000個を5日前から焼き始め、クーラーのない部屋で常温保管していた」と明かしていました。製造環境の室温管理を怠り、温かいままラップや個包装袋に密閉したことで結露が生じ、熱帯雨林のような高温多湿の環境が意図せず作り出されてしまったことが決定打となりました。