期日前の読み方はどっち?「まえ」「ぜん」の真相と使い分け
そもそも、なぜこれほどまでに「期日前」という語が日常に浸透したのでしょうか。その原点は、2003年(平成15年)12月1日に施行された公職選挙法の大改正にあります。それ以前の日本において、投票日当日に投票所へ行けない有権者に用意されていたのは「不在者投票制度」のみでした。
かつての不在者投票は、極めて厳格かつ煩雑な手続きを要しました。投票用紙を内封筒に入れ、さらに外封筒に収めて封かんし、表面に署名した上で選挙管理委員会に提出するという二重封筒方式が採られていたためです。投票を受け付ける自治体側も、選挙期日当日の投票締め切り後に封筒を一つひとつ開封し、名簿と照合して投票箱へ投函するという膨大な事務負担を強いられていました。その結果、「手続きが面倒で投票を諦める」という棄権の温床となっていたのです。
そこで導入されたのが「期日前投票制度」でした。この制度の画期的な点は、「投票日前であっても、選挙当日の投票所と全く同じように、投票用紙を直接投票箱へ投函できる」という点にあります。二重封筒による厳封手続きが廃止されたことで、有権者の心理的・物理的ハードルは劇的に引き下げられました。さらに総務省が制度創設時に配布した広報資料や当時の研究者の間では、将来的な電子投票の全国展開を見据えた実験的インフラとしての位置づけも含まれていました。
現在では国政選挙において、全投票者の約3割から4割に達する2,000万人以上が期日前投票所を利用しています。選挙当日の天候不良や突発的な用事を回避できる合理的なシステムとして、日本の民主主義を支える中核インフラへと成長したのです。