旧吹上トンネルの真相と現在|心霊現象の虚実と厳重封鎖の歴史検証
怪談の舞台として消費されがちな吹上峠ですが、本来語られるべきは日本近代土木史における重要な遺産としての価値です。とりわけ初代の「旧旧吹上トンネル(吹上隧道)」は、明治期の日本のインフラ整備の歩みを雄弁に物語っています。
明治時代、青梅と埼玉県の飯能を結ぶ吹上峠は、急峻な山道であり、特産品である絹織物(青梅縞)や木材、石灰石の輸送において最大の隘路(あいろ)となっていました。輸送効率を劇的に改善するため、地元の有力者や住民が有志で資金を募り、当時の最先端技術であったレンガ積みのトンネルを開削したのです。
地元の人々が生活の向上と産業の近代化を願い、多大な労力と私費を投じて貫通させた歴史的土木遺産が、後世の無責任なオカルトブームによって「呪われた場所」という歪んだイメージで上書きされてしまったことは、地域の歴史継承という観点からも極めて惜しまれる事態といえます。