視力を失いかけた洋画家・粉川江里子──光と影のキャンバス、10年の空白を超えた真実の叫び
病からの生還プロセスにおいて、粉川は西洋医学だけに頼らない独特の養生法を実践してきた。その筆頭が、能楽に通じる「謡(うたい)」の発声と、定期的な鍼灸治療である。
腹底から声を出し、息をコントロールする謡の訓練は、自律神経の不調を整え、滞っていた身体のエネルギーの流れを活性化させた。また鍼灸を通じて自身の肉体と向き合う経験は、皮膚感覚や筋肉の微細な緊張感を研ぎ澄ます結果となった。これらの身体的アプローチは、彼女が描く人物像の「骨格」や「息遣い」に直接的な影響を与えている。