夕映えを待ちながら歌詞の真相|因幡晃の名曲が今再脚光を浴びる理由
因幡晃といえば、1976年に「第10回ポピュラーソングコンテスト(ポプコン)」でグランプリを獲得し、デビュー曲『わかって下さい』で一躍スターダムへ駆け上がったことで広く知られています。その類まれなる美声と、張り詰めた糸のような繊細さを宿すボーカルスタイルは、当時のフォークブームの中でも突出した存在感を放っていました。
シングル『夕映えを待ちながら』の発売日は1980年5月21日(ディスコメイトレコード)。1970年代のフォークブームが都市型ポップスやニューミュージックへと変貌を遂げていく端境期に世に送り出されました。当時の音楽業界関係者の証言や当時のライナーノーツを紐解くと、商業的なキャッチーさに迎合する風潮に抗い、本人が「一人の人間が夕暮れ時に立ち止まり、過去と対峙する純粋な孤独」を徹底的に追求して生み出された楽曲であることが窺えます。
制作当時、因幡はツアーの合間に目にした日本各地の夕景スケッチを書き留めていたといいます。スタジオレコーディングでは過度な装飾音を排し、アコースティックギターの爪弾きと憂いを帯びたストリングス、そして何よりも因幡自身の澄み渡るハイトーンボイスが際立つアコースティック主体の音像が構築されました。哀感を誇張するのではなく、静かに滲み出る寂寥感をすくい上げる作業――それこそが、本作が色褪せない最大の制作秘話といえます。