中村俊輔と本田圭佑の不仲説の真相|南アW杯世代交代と現在の絆
不仲説の象徴として今なお語り継がれているのが、2009年9月5日にオランダ・エンスヘデで行われた国際親善試合オランダ戦のワンシーンです。前半36分、ゴール正面やや左寄り、距離約25メートルの絶好の位置で日本がFKを獲得した際、ボールの前に歩み寄った中村俊輔に対し、代表入りして間もない本田圭佑が歩み寄り、至近距離で何事かを要求しました。
代表の絶対的キッカーとして君臨し、セルティック時代にUEFAチャンピオンズリーグでマンチェスター・ユナイテッドから伝説のFKを叩き込んでいた中村に対し、本田が放った言葉は「オレに蹴らせてください」という直談判でした。ピッチ中央で交わされた数秒間の問答の後、中村はボールを譲らず左足で直接狙いましたが、シュートは壁に阻まれます。この瞬間、テレビ中継を通じて全国のファンに「序列を脅かす生意気な若手と、プライドを譲らないベテラン」という鮮烈な構図が焼き付けられました。
後に中村自身が自著やテレビの特別対談番組で明かした証言によると、中村は内心で「この場面でオレに言いに来るメンタリティは本物だな」と驚きつつも、キッカーとしての矜持からボールを渡す選択はしなかったと述懐しています。一方の本田も、当時のオランダ・VVVフェンロで圧倒的な結果を残しており、「自分が結果を出してチームを勝たせる」という野心を隠そうともしませんでした。二人の間に走った火花は、不仲によるものではなく、世界最高峰の舞台を見据えるフットボーラー同士のエゴとプライドの純粋な激突だったのです。