『Dumb Ways to Die』の正体|世界が中毒になった元ネタと教訓
『Dumb Ways to Die』の元ネタは、オーストラリア・ビクトリア州メルボルンの近郊鉄道を運行するメトロ・トレインズ・メルボルン(Metro Trains Melbourne)が2012年11月に公開した鉄道安全キャンペーン用のPR動画です。企画・制作を手掛けたのは大手広告代理店のマッキャン・メルボルン(McCann Melbourne)でした。
当時、メルボルンの鉄道網では、若年層を中心としたホームからの転落、線路の無理な横断、遮断機を無視した侵入による人身事故やヒヤリハットが深刻な社会問題となっていました。鉄道会社は長年、「線路に入ると危険」「命を大切に」といった従来型の厳格な警告サインや、痛ましい事故現場を模した恐怖訴求の広告を展開していましたが、若者たちの危険行動にはほとんど歯止めがかかりませんでした。ターゲット層である10代から20代前半の若者は、公共機関による「上から目線のお説教」に対して強い心理的拒絶反応(リアクタンス)を示し、警告を無視する傾向があったためです。
そこで制作チームは発想を180度転換しました。「恐怖で脅すのではなく、コンテンツとして楽しんでもらいながら、自発的に鉄道での無謀な行動がどれほど愚かで格好悪いかを自覚させる」というアプローチを採用したのです。こうして誕生したのが、思わず口ずさみたくなる歌に乗せて、おバカなキャラクターたちが自業自得の死を迎える3分間のショートアニメーションでした。
広告史を塗り替えた「カンヌライオンズ」史上最多受賞の衝撃
YouTubeに公開されるやいなや、動画は瞬く間にバイラル拡散し、公開からわずか24時間で100万回再生を突破。公開から数か月で再生回数は数千万回に達し、世界各国のニュース番組や情報メディアで大々的に取り上げられました。
この前代未聞の成功は、世界の広告界にも計り知れない衝撃を与えました。2013年に開催された世界最大規模の広告賞カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルにおいて、フィルム部門、インテグレーテッド部門、PR部門、ダイレクト部門、ラジオ部門の計5部門で最高賞「グランプリ」を受賞。合計で28ものライオン(賞)を獲得し、同映画祭の歴史上最も成功した受賞広告として記録に名を刻みました。