コーギーの尻尾を切る理由とは?断尾の歴史と「しっぽあり」急増の真相
現在一般的に飼育されているコーギーの多くにしっぽがない理由は、ペットとしての見た目を整えるためだけではありません。発祥の地であるイギリス・ウェールズ地方の生活様式と、使役犬としての過酷な現場環境に深く根ざした4つの明確な歴史的背景が存在します。
最も大きな実用的理由は、コーギー牧畜犬の歴史にあります。ウェルシュ・コーギー・ペンブロークは、放牧された牛の踵(かかと)に噛みついて群れを統率する「ヒーラー(Heeler)」と呼ばれる牧牛犬でした。体高が低いため、体重500kgを超える巨牛が暴れた際、長い尻尾を垂らしていると牛の蹄に踏まれ、尻尾の壊死や脊椎損傷といった致命的な外傷を負うリスクが極めて高かったのです。牛に踏まれる事故を未然に防ぐ実務的処置として、断尾が定着しました。
二つ目の決定打となったのが、中世から18世紀にかけてのイギリスで制定されていたコーギー断尾の税金説です。当時の英国では、富裕層が愛玩目的で飼育する犬に贅沢税(犬税)が課されていましたが、農民の生計を支える実用的な「作業犬・牧畜犬」は課税を免除されていました。その作業犬であることを徴税官へ証明するための公的な目印として、尻尾を切り落とす慣習が制度化されたという歴史的事実があります。
さらに、ウェールズ地方特有の険しい藪や棘(とげ)の多い茂みを走る際、尻尾に泥やトゲが付着して起こる皮膚感染症を防ぐ衛生上の理由もありました。やがて19世紀後半以降にドッグショー文化が隆盛すると、ケネルクラブの犬種標準(スタンダード)に「尾は極めて短いこと」と明記され、牧畜を行わない家庭犬に対してもコーギー断尾理由として外見的固定化が受け継がれることになりました。