ドイツ帝国を破滅へ導いた皇帝ヴィルヘルム2世の波乱と失言の真相

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1859年、プロイセン王国の王位継承者の長男として生を受けたヴィルヘルム2世は、誕生の瞬間に過酷な運命を背負うことになります。難産による腕神経叢損傷(分娩麻痺)を負い、左腕の成長が著しく阻害されたのです。彼の左腕は右腕より約15センチ短く、生涯にわたってほとんど自由に動かすことができませんでした。

軍国主義の気風が色濃いプロイセン王室において、身体の障害は「軍人失格」を意味する致命的な欠陥とみなされました。母であるヴィクトリア妃(英ヴィクトリア女王の長女)は息子の障害を受け入れられず、機械で身体を矯正する過酷な治療や、落馬を繰り返させながら乗馬を強要する冷酷なスパルタ教育を課しました。

この幼少期の過剰なプレッシャーが、彼の内面に根深い劣等感を植え付けます。「完全無欠な偉大な君主」として認められたいという反動は、やがてヴィルヘルム2世特有の誇大妄想的で攻撃的な性格へと変貌していきました。肖像画や写真では常に左手を隠すか、サーベルの柄や手袋を握らせて威厳を演出するなど、コンプレックスを覆い隠すための虚飾が日常化していったのです。

橋本 菜々子

橋本 菜々子

トレンドリサーチャー

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。