モノリンガルは本当に損か?脳科学が暴く単一言語話者の隠れた強み
言葉が通じない恐怖と分断。アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の映画『バベル』は、異なる言語に引き裂かれる人間の孤独を生々しく描き出した。古くからユネスコをはじめとする国際機関は、母語の保護と文化的多様性を訴え続けてきたが、ビジネスや学術の世界では長年、バイリンガリズムこそが知性の象徴であると盲信されてきた側面は否めない。
「2つ以上の言語を話せなければ、これからの時代は生き残れない」。そんな強迫観念が日本社会を覆い尽くしてきた。しかし、複数の言語を中途半端に操ることで生じる「認知的負荷」や、母語の語彙力・概念理解が浅くなるリスクについて語る声は驚くほど少なかった。
表層的な日常会話を2カ国語でこなすことと、ひとつの言語で哲学的な思索や高度な論理構築を行うこと。どちらが人間の知的能力として本質的なのか。多言語神話に陰りが見え始めた今、議論は新たなフェーズに突入している。