豊川悦司『愛していると言ってくれ』色気と手話の秘密!名作の裏側と現在
ネット上のコミュニティでは時折、「最終回ですれ違ったまま二人は別れたバッドエンドだったのでは?」という疑問や誤解が見受けられます。しかし、物語が提示した結末は、より深く成熟した愛の形でした。
劇中終盤、晃次と紘子はお互いを深く愛しながらも、周囲の人間関係やそれぞれの葛藤、そして若さゆえのすれ違いから一度別れを選びます。紘子は故郷の仙台へ帰り、晃次は自らの絵画の道と向き合い続けました。そして物語は3年後の夏へと飛びます。
再び東京の井の頭公園を訪れた紘子は、かつて晃次が手を伸ばしたあのリンゴの木の下に立ちます。そこに現れたのは、3年の時を経て画家の道を歩み続けた晃次でした。木の上に実るリンゴを見つめる紘子に、晃次は再びそっと手を伸ばしてリンゴをもぎ取ります。紘子が手話で「愛していると言ってくれ」と問いかけ、晃次が柔らかな笑みを浮かべて見つめ合うラストシーンは、二人の絆が時間を超えて再び結び直されたことを示す、希望に満ちたオープンエンドでした。
本作の先進性は、聴覚障害を単なる「同情を誘う悲劇の要素」として描くのではなく、互いの価値観や生き方の違いと向き合う一人の自立した大人の恋愛として描き切った点にあります。