やなせたかしと手塚治虫の絆|9歳差の劣等感と虫プロ共闘の真相
二人の関係性を紐解くうえで見逃せないのが、実年齢とキャリアのギャップです。やなせたかし(1919年生)は手塚治虫(1928年生)よりも9歳年上でした。しかし、漫画界で名声を確立したのは手塚治虫の方が遥かに早く、戦後間もない1940年代後半にはすでに全国的なスター作家として君臨していました。
一方のやなせは、グラフィックデザイナーや舞台美術、放送作家など多岐にわたる分野で活動しながらも、「本業は何なのか」と自問自答する苦節の時代を過ごしていました。年下の圧倒的な天才が時代の寵児として次々と大ヒット作を世に放つ姿を、やなせは羨望と焦燥が入り混じる複雑な思いで見つめていたと振り返っています。
二人の本格的な交流は、1960年代に手塚がアニメーション制作会社虫プロダクションを設立したことから急速に深まります。手塚はすでにデザイナーや詩人として独自の感性を発揮していたやなせの才能を高く評価しており、アニメ界への進出に際して協力を求めたことが二人の共闘の契機となりました。