『考える人』は地獄の門の一部?ロダンが隠した戦慄の真相に迫る
世界で最も有名なブロンズ像のひとつである『考える人』ですが、ロダンがこの像を構想した本来の居場所は、巨大な扉のファサードでした。ロダンと『考える人』、『地獄の門』の関係を語る上で欠かせないのが、1880年にフランス政府からロダンへ下された「装飾美術館の正門制作」という公的依頼です。ロダンはこの巨大な門のテーマに、イタリアの詩人ダンテ・アリギエーリの代表作『神曲』地獄篇を選び取りました。
全高約6メートル、幅約4メートルにも及ぶ『地獄の門』において、考える人が座している位置は門の最上部、中央の梁(ティンパヌム)の直下です。岩座に腰掛け、右肘を左太ももに乗せて前屈みになった彼は、門の左右や下部で永遠の劫火に焼かれ、苦悶の叫びをあげる200体以上もの亡者たちを真上から凝視しています。
ダンテの『神曲』地獄篇において、地獄の入口の門には次の戦慄すべき言葉が刻まれています。「ここに入る者は一切の希望を捨てよ(Lasciate ogne speranza, voi ch'intrate)」。『地獄の門』における「希望を捨てよ」という意味は、救済の余地が永遠に閉ざされた究極の絶望を指します。上から身を乗り出すように配されたこの人物は、救いようのない人類の業と悲惨な運命の深淵を一身に浴びながら、自らの内省へと沈潜しているのです。