なぜ見本を廃止?2歳児の3月製作で創造性が爆発した「脱・画一化」の真相

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壁一面に貼られた作品群を見て、息を呑んだ。青いチューリップ、紫色の太陽、斜めに千切られた桜の花びら。どれひとつとして同じ形がない。保育士がハサミで切り抜いた台紙に子どもが目鼻を描き足すだけの「量産型アート」は、ここ数年で急速に姿を消した。

「大人が作った見本に近づけさせる作業は、もう製作とは呼びません」。世田谷区の保育施設で主任を務める女性(41)は言い切る。AIやデジタルツールの普及で業務効率化が進んだ2026年だからこそ、生身の子どもが素材とぶつかり合う「偶発性の価値」が再評価されているのだ。保育所保育指針の浸透も手伝い、評価基準は「上手にできたか」から「どれだけ夢中になったか」へと完全にシフトした。子どもたちは机にかじりつき、時に眉間にしわを寄せながら、自分の世界を紙の上に叩きつけている。

田中 結衣

田中 結衣

デジタルマーケティングコンサルタント

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。