米へんに花「糀」の正体とは?麹との違いや由来・スマホ変換まで徹底解説
情報空間にあふれる発酵関連のコラムの中には、事実関係を誤認した言説が散見される。特に注意すべき2つの典型的な誤解を是正しておきたい。
誤解1:「糀」は古代中国から伝わった漢字の古い字体(旧字体)である
これは完全な誤謬である。「麹」の旧字体は「麴」であり、麦偏に匊(すくうの意)と書く。「糀」という漢字は中国の正統な字典である『康煕字典』には原則収録されておらず、日本の『新撰字鏡』や後世の和製辞書に現れる正真正銘の国字である。中国の学術書や台湾・香港の文献をいくら遡っても「糀」という表記は存在しない。日本列島の温暖湿潤な気候と、米を神聖視する稲作信仰が融合した結果として生まれた、日本文化の結晶である。
誤解2:「原料が何であっても、職人の好みで『糀』と表記してよい」
これも大きな間違いだ。前述した通り、「糀」は「米偏」を持っている。したがって、大麦を発酵させた「麦こうじ」を「麦糀」と書いたり、大豆を発酵させた「豆こうじ」を「豆糀」と表記したりすることは、漢字の構造的論理を破綻させる行為である。業界団体の品質表示ガイドラインや良識ある蔵元では、麦や大豆を原料とする場合は必ず「麦麹」「豆麹」と表記する。米を一切使わない製品に「糀」を濫用することは、消費者に米原料と誤認させる恐れがあるため厳に戒められている。