映画『水のないプール』狂気と実話の真相|内田裕也が刻んだ衝撃の全貌
映画『水のないプール』が今なお映画ファンやサブカルチャー研究者の間で特別視される最大の要因は、「徹底して乾いたリアリズム」と「剥き出しの狂気」の共存にあります。
本作の主人公・水島準一(内田裕也)は、地下鉄の改札口で乗客の切符を無表情に切り続ける極めて地味な鉄道員です。社会に完全に埋没し、誰からも警戒されない男が、夜になるとクロロホルムと睡眠薬を忍ばせて標的の女性宅へ侵入する凶行を繰り返します。内田裕也といえばロックスターとしての派手なパブリックイメージが先行しがちですが、本作で見せるのは感情を完全に押し殺した不気味な静寂と、獲物を前にしたときの異様な執着です。
製作当時のインタビューや関係者の証言によると、内田裕也自身が「映画界に風穴を開ける本物の作品を作りたい」と私財を投じて企画を立ち上げ、若松孝二監督に直談判した経緯があります。荒井晴彦らによる研ぎ澄まされた脚本と大野克夫による哀愁漂う音楽が加わり、インディペンデント映画の枠組みを超えた異様な緊張感をスクリーンに定着させました。