Stap細胞と笹井芳樹の悲劇:論文捏造の裏側に隠された真実
スキャンダルの陰に隠れがちだが、笹井氏が発生生物学に残した功績は今なお世界の生命科学を支えている。彼を単なる事件の当事者として片付けることは、科学史における重大な損失だ。
笹井氏はES細胞を用いて、試験管内で網膜や脳の立体構造を自己組織化させる技術を世界で初めて確立した。平面培養が限界とされていた時代に、細胞自らが立体的な臓器の芽を形成する現象を解明した業績は、まさに革命的だった。現在、世界中で活発に行われているミニ臓器(オルガノイド)研究の礎は、彼の手によって築かれたものだ。
稀代の知性が途絶えなければ、再生医療の進化はさらに前進していたかもしれない。科学界が失ったものの大きさを、私たちは今一度認識する必要がある。