『男はつらいよ』源公の知られざる素顔、昭和の名脇役が遺した熱狂

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芸名である佐藤蛾次郎の由来は、初代市川猿之助の舞台を見た劇団主宰者が「蛾のように舞い、次男坊のように親しまれる役者に」と名づけたことに端を発する。大阪で生まれ、幼少期に北海道へと渡った彼は、早くから児童劇団で頭角を現し、泥臭さと鋭さを併せ持つ特異な少年俳優としてキャリアを踏み出した。

素顔の彼は、スクリーンの破天荒なイメージとは裏腹に、驚くほど繊細で周囲への気配りを欠かさない人物だった。東京・銀座で自ら腕を振るった飲食店では、特製の手作りカレーが多くの映画人やファンに親しまれた。撮影現場でも共演者や裏方スタッフのために大鍋で料理を振る舞い、過酷な現場の空気を瞬時に和らげたという。共演した俳優仲間が後年振り返ったところによれば、彼はどれほど出番が短いシーンであっても前夜から徹底的に小道具の手入れを行い、役の背景をノートに書き留めていた。あの奔放に見える名演の裏には、誠実極まりない役作りの積み重ねがあったのだ。

井上 凛

井上 凛

シニアコンテンツプロデューサー

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。