四川・広東と何が違う?北京中華料理が別格と呼ばれる歴史と味の真相
広大な中国全土の食文化は、大きく「北京」「四川」「広東」「上海」の四大系統に大別されます。日本の外食市場において、麻辣(マーラー)の痺れを売りにする四川料理や、飲茶文化で親しまれる広東料理と比べたとき、四大中華料理の違いにおける北京料理の立ち位置はひときわ特殊です。その最大の理由は、北京が数百年にわたり帝都であり続け、全国から集約された調理技術が選別・昇華された「権力と格式の厨房」であった点にあります。
四川料理との違いを見れば、気候風土の違いが味付けに直結していることが明白です。多湿な盆地気候を乗り切るために唐辛子や花椒を多用する四川に対し、冬の寒風吹きすさぶ北京では、体を温めエネルギーを蓄えるための動物性油脂、ネギや生姜、ニンニクの薬味、そして塩気をベースにした濃厚な仕立てが好まれます。一方、広東料理との違いにおいては、豊かな海産物と温暖な気候を背景に「薄味で素材本来の鮮度を活かす」広東に対し、北京料理は小麦粉文化を基盤とし、強火で一気に炒め上げる「爆(バオ)」や、時間をかけて煮込む技法によって力強いコクを生み出します。
北京料理の特徴を一言で表現するなら、「山東料理の確かな火入れ技術」「モンゴルや満州族の肉食文化」、そして「皇帝に仕えた料理人たちの洗練」が融合した総合芸術です。北方民族の持ち込んだ羊肉を調理する技術と、歴代王朝が集めた選りすぐりの料理人たちによる厳しい規格が、他地域にはない荘厳な気品を与えています。