美瑛セブンスターの木の由来と現在|歴史の真相と2026年絶景ガイド
北海道美瑛町に点在する名木群のなかでも、ひときわ高い知名度を誇るセブンスターの木。この名が定着した決定的な契機は、1976年(昭和51年)に日本専売公社(現・日本たばこ産業 / JT)が発売した銘柄「セブンスター・カスタム・ライト」の全国限定観光パッケージに、この木の写真が採用されたことでした。
たばこパッケージ採用の経緯を紐解くと、当時の時代背景が色濃く浮かび上がります。1970年代中盤の日本は、国鉄の「ディスカバー・ジャパン」キャンペーンなどを契機に、若者やカメラ愛好家を中心に地方の原風景を巡る国内旅行熱が爆発した時代でした。当時、広告制作のクリエイターや写真家たちが北海道の雄大な大地を求めてロケハンを繰り返すなか、美瑛の丘の頂で孤高の存在感を放っていたこの木に白羽の矢が立ちました。
地平線が360度広がるなだらかな丘の上に、一本だけぽつんと根を張るカシワの木(ブナ科)。たばこの箱というわずか数センチ四方のキャンバスに印刷されたその美しいシルエットは、「北海道の雄大さ」の象徴として瞬く間に全国の消費者の脳裏に刻まれました。それまで地元の農家にとって単なる農地の境界木や、農作業の合間に日陰を作る一本の樹木に過ぎなかった木が、メディアの力によって一夜にして全国区の「名所」へと変貌を遂げたのです。
カシワの木は、秋に枯れた葉が冬の間も落ちず、春に新しい若葉が芽吹くまで枝に残り続けるという極めて珍しい特徴を持っています。この生態から古来「代が途切れない」「子孫繁栄」の縁起木として親しまれてきましたが、美瑛の厳しい冬の風雪に耐え、葉を抱えながら立ち尽くすその姿は、訪れる人々に北の大地の力強い生命力を直観させます。