天下第一の名香「蘭奢待」の真相|信長が切り取った理由と香りの正体
一般に「蘭奢待(らんじゃたい)」の名で広く知られるこの宝物は、宮内庁正倉院事務所の公式記録および正倉院宝物としての正式名称を黄熟香(おうじゅくこう)と呼びます。中倉に納められている沈香の一種であり、長さ156.0cm、最大径42.5cm、重量は約11.6kgにおよぶ規格外の巨木です。
「蘭奢待」という優雅な雅称は平安時代以降に広まったとされ、漢字の中に「東・大・寺」の三文字が巧妙に隠されている「隠し文字(文字遊び)」としても有名です。
- 「蘭」の草冠の下に「東」
- 「奢」の大冠の下に「大」
- 「待」の旁(つくり)に「寺」
植物学的な正体は、ジンチョウゲ科アキラリア属などの倒木や傷ついた幹に、長年の樹液が固まりバクテリアの作用によって芳香成分が凝縮した沈香(じんこう)です。日本国内には自生しない植物であるため、東南アジア(現在のベトナムやタイ周辺)から遣唐使などを経由して日本へと渡来したと推測されています。現存する沈香としては世界最大級の威容を誇り、名実ともに「天下第一の名香」と崇められてきました。