サイゼリヤの羊肉串アロスティチーニ現象!狂乱の品薄とスパイスの真相

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サイゼリヤのオリジナル商品と思われがちなアロスティチーニですが、その本態はイタリア中部・アブルッツォ州で1世紀近く受け継がれてきた崇高なイタリア郷土料理です。

食文化の記録やWikipedia等の民俗学データによると、この料理の起源は1930年代に遡ります。アブルッツォ州のペスカーラ県山間部、カルピネート・デッラ・ノーラ、ヴィッラ・チェリエーラ、チヴィテッラ・カザノーヴァの村々に囲まれたヴォルティーニョ高原で、定住型の牧羊を営んでいた2人の羊飼いが考案したという伝説が残されています。当時、乳や羊毛を採り終えて硬くなった老いた去勢羊(カストラート)の肉を無駄にせず美味しく食べるため、肉を細かく刻んで柳の小枝に刺し、細長い炭火の火鉢で炙って食べたのが始まりです。

青木ゆり子氏の著書『世界の郷土料理事典』(誠文堂新光社)などでも詳しく解説されている通り、本場アブルッツォにおけるアロスティチーニの儀式性は極めて厳格です。現地では「カナリーナ(Canalina)」または「フォルナチェッラ」と呼ばれる、雨樋のように細長い特注の炭火焼き器を使用します。串の持ち手部分が火に触れて燃えないよう工夫されたこの焼き台で、煙をもうもうと上げながら焼き上げるのが職人の技です。

驚くべきことに、本場イタリアではクミンなどのエスニック系スパイスは一切使用しません。味付けは粗塩のみ、または焼き網の上にローズマリーの小枝を浸したオリーブオイルを叩きつける程度という極めてシンプルなものです。一口大の羊肉を熱々のうちに串から直接前歯で引き抜き、地元産のエクストラバージンオリーブオイルをたっぷり染み込ませた自家製パン(パーネ・ディ・カーザ)をかじり、アブルッツォの力強い赤ワイン「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ」で胃に流し込む。サイゼリヤは、この質朴な山岳料理に中東系スパイスの魔法を融合させることで、日本人の舌に合わせた大衆エンターテインメントへと昇華させたのです。

松本 悠斗

松本 悠斗

サステナビリティ研究家

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。