『完全無欠のロックンローラー』歌詞の真相と高原兄の現在を徹底解明
『完全無欠のロックンローラー』の歌詞が当時の少年少女から大人までを熱狂させた最大の要因は、当時隆盛を極めていた「昭和ツッパリ文化」の精巧なパロディと自虐の美学にありました。1980年代初頭の日本は、横浜銀蝿の大ヒットや漫画『ビー・バップ・ハイスクール』の前夜にあたる、ヤンキー・ツッパリカルチャーの全盛期です。街中にはリーゼントにドカン(太い学生ズボン)を身にまとった若者があふれていました。
高原兄が書き下ろした歌詞を精読すると、不良少年たちの強がりと、その内面に潜む情けない本音が対比構造で見事に描かれていることが分かります。
「A・T・A・M・A グングングングン良くなる」という印象的なリフレインは、ツッパリのポーズを取りつつも、心の底では学業成績へのコンプレックスや将来への不安を抱える等身大の若者の心理を鋭く突いています。喧嘩の強さを誇示しながらも、フラれたショックで涙を流し、母親には頭が上がらないという描写は、記号化された「悪ぶるツッパリ像」を徹底的に脱構築したものでした。
当時のインタビューで高原兄自身が「不良になりきれない普通の男の子の哀愁を描きたかった」と語っていた通り、この楽曲は単なるコミックソングではなく、思春期の自意識過剰と劣等感をロックンロールの疾走感に乗せて笑い飛ばす、高度な青春風刺劇だったといえます。