『沈まぬ太陽』実話の全貌とモデル人物のその後を徹底解剖
『沈まぬ太陽』は、「アフリカ篇」「御巣鷹山篇」「会長室篇」の全3部・単行本全5巻で構成される大河巨編です。物語の根底には、日本を代表するナショナル・フラッグ・キャリアであった日本航空(JAL)の実際の歴史と、1985年8月12日に発生した日本航空123便墜落事故の爪痕が深く刻み込まれています。
物語の時系列と各篇が描く核心部分は以下の通りです。
- アフリカ篇:国民航空の労働組合委員長として安全運航と労働条件の改善を要求した恩地元が、経営陣から危険分子とみなされ、カラチ(パキスタン)、テヘラン(イラン)、ナイロビ(ケニア)へと10年近くに及ぶ懲罰的な海外僻地転勤を命じられる過酷な流刑生活を描く。
- 御巣鷹山篇:恩地の帰国後に発生したジャンボ機墜落事故(乗員乗客524名中520名死亡)の阿鼻叫喚の現場と、恩地が担当した遺族係としての苦闘を描く。身元確認の凄惨さや遺族の怒りと悲痛な叫びを、一切の美化を排して記録。
- 会長室篇:内閣総理大臣の特命で再建のために乗り込んできた関西紡績の国見会長に抜擢された恩地が、不正経理、利権政治家との癒着、腐敗したドル先物予約など会社を蝕む巨大な闇に切り込むが、既得権益層の猛反発に遭い再び僻地へと追いやられる顛末を描く。
特に「御巣鷹山篇」における遺体安置所(群馬県藤岡市の藤岡市民体育館)の描写は、山崎豊子自身が遺族や救援関係者、医師団へ何年にも及ぶ徹底的な聞き取り調査を行って再現されたものです。事故原因とされた圧力隔壁の不当修理や、運行体制の乱れ、事故後の経営陣の保身に走る姿勢など、当時の報道資料や事故調査報告書に記された客観的証拠が生々しく織り込まれています。