乳がんのタイプで何が変わる?4大分類の特徴・進行速度と最新治療法
乳がん治療の設計図を決める「サブタイプ分類」は、がん細胞が持つ以下の3つの因子(バイオマーカー)を病理検査で調べることで行われます。
- エストロゲン受容体(ER):女性ホルモンを取り込んで増殖するアンテナ
- プロゲステロン受容体(PgR):同じく女性ホルモンを取り込むアンテナ
- HER2(ハーツー)タンパク:がん細胞の表面にあり、増殖シグナルを出す受容体
これらの組み合わせにより、乳がんは大きく4つのサブタイプに分類されます。それぞれの特徴と進行スピードの違いは次の通りです。
1. ルミナルA型(ホルモン受容体陽性 / HER2陰性 / 増殖能力が低い):
日本人乳がん患者の約50〜60%を占める最も多いタイプです。女性ホルモンを栄養源として増殖しますが、細胞の増殖速度は比較的おとなしく、ホルモン療法が非常に高い効果を発揮します。
2. ルミナルB型(ホルモン受容体陽性 / HER2陰性または陽性 / 増殖能力が高い):
ホルモン受容体陽性でありながら、ルミナルA型に比べて細胞の増殖スピードが速いタイプです。ホルモン療法に加えて、化学療法(抗がん剤)や分子標的薬を組み合わせた積極的な治療が検討されます。
3. HER2陽性乳がんの特徴(ホルモン受容体陰性 / HER2陽性):
全乳がんの約15〜20%を占めます。HER2タンパクが過剰に発現しており、無治療の場合の進行スピードは速い傾向にあります。しかし、HER2タンパクをピンポイントで狙い撃ちする分子標的薬が劇的に効くため、現在では治療成績が最も大きく改善したタイプの一つです。
4. トリプルネガティブ乳がんの予後(3つの受容体がすべて陰性):
全乳がんの約10〜15%を占め、ホルモン受容体もHER2も持たないタイプです。女性ホルモンやHER2を標的にした治療が使えないため、従来の化学療法が治療の軸となります。進行速度が比較的速く、診断から2〜3年以内の再発リスクに注意が必要とされますが、初期治療でがんを完全に死滅(病理学的完全奏効:pCR)させることができれば、その後の長期予後は良好であることが分かっています。