五輪放送権料はなぜ高騰するのか|Nhk民放連の限界と無料中継の危機
テレビ受像機からスマートフォンやコネクテッドTVへと視聴スタイルが劇的にシフトする中、視聴者の期待を集めているのがインターネット同時・見逃し配信です。しかし、ここにこそ無料テレビ中継の危機を加速させる構造的な落とし穴が存在します。
民放各局が共同出資する無料配信プラットフォーム「TVer」において、五輪競技のライブ配信は大きなアクセスを集めています。しかし、TVerネット配信権利を巡るコスト構造は極めて歪です。五輪のデジタル配信権を包括的に行使するためには追加の権利処理費用や制作費が上乗せされるだけでなく、数十万人から数百万人規模が同時接続するライブストリーミングを維持するための「CDN(コンテンツ配信ネットワーク)コスト」が莫大に跳ね上がります。
インターネット広告の単価は、従来の地上波プライムタイムのテレビCM枠に比べてまだまだ低水準にとどまっています。どれだけ視聴回数が伸びてアクセス過多でサーバーが悲鳴を上げようとも、得られるプログラマティック広告やインストリーム動画広告の収益では、配信インフラ維持費と権利料の持ち出し分を到底回収できません。現場の技術担当者からは「アクセスが殺到すればするほど配信コストが膨らみ、赤字幅が広がる」という悲痛な声さえ漏れるほどです。
この結果、地上波テレビ離れが進む一方で、ネット配信単体では事業として成立しないという二重苦に陥っています。この収益モデルの断絶が解消されない限り、民間放送局が五輪中継を「完全無料」で維持し続けることは、経済合理性の観点から極めて非現実的なシナリオになりつつあります。