蘇我蝦夷と入鹿は本当に逆賊か?乙巳の変に隠された権力の真実
歴史は常に勝者の手で書かれる。この鉄則を最も鮮やかに体現しているのが、8世紀初頭に完成した『日本書紀』だ。同書において蘇我氏は、王権を脅かす傲慢な専制者として執拗なまでに矮小化され、あるいは怪物化されている。
しかし、行間を冷徹に読み解けば、矛盾は至るところに露呈する。飛鳥時代の国家運営において、蘇我氏は屯倉の設置や財政システムの整備を一手に担い、渡来系の技術者集団を統括して先進的なインフラを敷設した最大の実務集団だった。彼らを逆賊に仕立て上げなければ、クーデターによって権力を掌握した側の正当性を担保できなかった。勝者が自らの血塗られた蜂起を「聖断」へと昇華させるためのレトリック――それが、今日まで受け継がれてきた悪逆非道な蘇我氏像の正体である。