なぜ須坂の人形博物館に人が殺到?大迫力の雛壇と見どころ徹底解説
館内最大のハイライトは、なんといっても春の特別企画展で見られる壮麗な雛壇です。高さ約6メートル、計30段におよぶ特設雛壇には、お内裏様やお雛様、五人囃子、随臣たちが整然と並び、その総数は1,000体を超えます。企画や年度によっては「三十五段雛壇」や隣接する版画美術館・歴史的建物園との連動展示も展開され、エリア一帯が百花繚乱の絵巻物へと変貌を遂げます。
現場で細部に目を凝らすと、制作年代ごとの顔立ちの違いや、京都風と江戸風の仕立ての差異、職人の息遣いが伝わる細やかな道具類に気づかされます。単に数が多いだけでなく、一体一体の人形が持つ個性が巨大な群像劇として再構成されている点が、鑑賞者に深い感動を与える理由です。
雛壇の熱気に圧倒されたあとは、静謐な空気が漂う「小池千枝コレクション」の展示室へ足を運ぶのがおすすめです。小池千枝氏は、高田賢三氏や山本耀司氏をはじめ、世界のトップデザイナーを数多く世に送り出した伝説的な教育者でした。氏が世界中を巡り、独自の鋭い審美眼で買い集めた民族人形群は、「衣服の原点と人間の尊厳」を雄弁に物語っています。
東欧の緻密な刺繍、アフリカの力強い木彫とビーズ細工、中南米の鮮やかな天然染料の織物など、衣服のプロフェッショナルが厳選した布地やカッティングの妙は、服飾デザインを学ぶクリエイターにとっても第一級のインスピレーション源となっています。